◎八十八夜
5月2日頃(2019年は5月2日)。立春から数えて八十八日目。 春から夏に移る節目の日で、この
日から夏の準備を始めます。
「夏も近づく八十八夜~」という歌もあるように、暖かくなってきます。最近は品種改良などが進み、昔
ほど種まきに気を遣うこともなくなったようですが、かつては八十八夜は種まきの大事な目安となって
いたようです。
「八十八」という字を組み合わせると「米」という字になることから、農業に従事する人にとっては五穀
豊穣を願う特別重要な日とされてきました。今でも、農耕開始の到来を祝って神事が行われるところが
あります。
抹茶そば、抹茶豆腐、抹茶アイス、抹茶カクテル・・・。あらゆるものに、抹茶味があり、抹茶味の食
品は人気がありますが、抹茶そのものになると「よくわからない」という方が少なくありません。おいしい
、まずいということよりも、抹茶をいただくときの作法に気を取られて、味わう余裕がないことも原因の
ひとつかもしれません。
しかし、茶の湯は奥が深いのはもちろん、懐も深いので、力を抜いておいしくいただくのが一番です。
お作法を知らなくても味わえますが、いただくときの基本を押さえておくと良いでしょう。
■抹茶のいただき方
一般的な薄茶のマナーをご紹介します(流派によっては異なるところもあります)。
1.右手で茶碗を持って左手に乗せ、右手を添えたまま茶碗を少し上方に上げて感謝の意を表します
(「押しいただく」といいます)。
2.茶碗の正面に口をつけるのを避けるために、手のひらの上で時計回りに2度回します。
3.何口で飲んでも構いませんが、お茶席では最後の一口をズズッと音を立てて飲み干し、飲み終わり
の合図とします。
4.飲み口を右手の親指と人差し指でふき取り、その指を懐紙で拭いて清めます。
5.時計回りと逆に2度回して正面を手前に戻し、右手で茶碗を置きます。
お茶をいただく前に、大切な器を傷つけないように、指輪やブレスレット、時計などはあらかじめ外し
ておきましょう。また、口紅をティッシュなどで押さえておくと、飲み口に口紅の跡がつかず安心です。
お茶席の場合、ご挨拶やお菓子のいただき方の作法もありますが、周囲の方が手ほどきしてくださ
るので大丈夫です。
「一服どうぞ」「ありがとう」の気持ちを大切にして、心を込めて点ててくださったお茶を、肩の力を抜い
て堪能しましょう。
■抹茶の点て方
家で手軽に抹茶を点てて味わってみましょう。お茶を点てるための茶筅(ちゃせん)だけは必要です
が、抹茶は少量でも買えます。茶碗は大ぶりの飯茶碗、カフェオレボールなどでも大丈夫です。
1.茶碗にお湯を入れて温め、中をよくふき取ります。
2.ティースプーン2杯の抹茶を入れ、熱いお湯を80cc程度、だいたい3口で飲み切れる分量を入れ
ます。
3.左手で茶碗を押さえながら、右手で茶筅を素早く動かしてかき混ぜます。
冷めないうちにいただきましょう!
◎江戸三大祭
江戸っ子は大の祭り好き。江戸っ子の心意気を今に伝えるのが数々の祭りです。中でも「山王祭」
と「神田祭」の二つは「天下祭」と呼ばれる盛大な祭りで、江戸の三大祭に数えられますが、残る一つ
には「深川八幡祭り」と「三社祭」があげられ、どちらを入れるかは意見がわかれるところのようです。
■山王祭と神田祭
ともに将軍家の庇護を受け盛大になっていった山王祭と神田祭。豪華な山車が江戸の町を練り歩
き、江戸城内にも練り込み将軍の上覧を賜ったので、江戸っ子たちに「天下祭」といわれて親しまれ
ました。天和元年(1681)、大規模な祭りを毎年行うのは大変ということで、山王祭と神田祭の本祭
りが1年おきに交互に斎行されることになり、その慣習は現在も続いています。
※山王祭
山王祭は、徳川将軍家の産土神(うぶすながみ)として信仰されてきた日枝神社(東京都千代田区
永田町)の祭礼です。「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王さま」といわれるように、山王祭の氏
子域は江戸一番の広さで知られていました。祭りの列が江戸城まで入ることを許された天下祭の一
つでもあります。
山王祭は「例大祭」を中心に夏越の祓(なごしのはらえ)や稚児祭なども含み、6月中旬に行われま
す。
本祭の年だけに行われる神幸祭は御鳳輦(ごほうれん)2基、宮神輿1基が、王朝装束をまとった神
職・氏子ら500名を伴い、千代田区、新宿区(四谷)、港区(新橋)、中央区など東京一広い氏子町会
を一日かけて巡幸します。優雅で格調高い行列は300mも続き、都心のビル群の中に華麗な時代
絵巻が繰り広げられます。
そして、もう一つの見どころが「下町連合渡御(したまちれんごうとぎょ)」。日本橋、京橋、八丁堀、
茅場町が連携し、神輿12基を繰り出し、約3000人が結集して下町を練り歩く光景は圧巻です。
※神田祭
「神田祭」は、江戸総鎮守「神田明神」(神田神社。東京都千代田区外神田)の祭礼です。5月15日
に近い日曜日を中心に5日間執り行われます。もともとは9月15日に斎行されていた秋の祭りでした
が、嵐による被害が発生し、明治になって比較的天候の安定している5月に行われるようになりまし
た。神輿の出る本祭りは山王祭と隔年で行われ、本祭が行われない年には神輿が出ない蔭祭が行
われています。
その昔は大きく絢爛な山車を曳行していましたが、道路事情の変化で今は神輿がメインの祭りになっ
ています。
神田明神は、大手町、丸の内、神田、日本橋、秋葉原、築地魚市場など都心の108の氏子町の総
氏神です。神幸祭では、大黒様を乗せた「一の宮鳳輦」、恵比須様を乗せた「二の宮神輿」、将門様を
乗せた「三の宮鳳輦」をはじめ、諫鼓山車(かんこだし)や獅子頭山車(ししがしらだし)などからなる行
列が、氏子の108町会を巡ります。夕方には日本橋より「附け祭」の行列も加わり1000人規模の大
行列となります。
翌日は、氏子町が町神輿を競い合う祭りの華、「神輿渡御」です。大小100基以上の町神輿が町に
操り出し、70基以上が神田明神を目指し、境内に繰り込む姿は壮観です。
5月15日、祭りの締めくくりとして最も重要な神事、例大祭が執り行われ、平和と繁栄を祈願します。
神田祭は、京都の祇園祭、大阪の天神祭ととともに日本三大祭りの一つにも数えられています。
■深川八幡祭りと三社祭
江戸三大祭の残る一つを「深川八幡祭り」とするか「三社祭」とするかで意見が分わかれるところで
すが、山王祭、神田祭が将軍家ゆかりの「天下祭り」とすれば、深川八幡祭り、三社祭は町民の祭り
といえるでしょう。江戸っ子気質で張り合って、神輿の担ぎ方や掛け声にも違いがあります。
※深川八幡祭り
富岡八幡宮(東京都江東区深川)の例大祭で、本祭りは3年に1度の8月15日を中心に行われてい
ます。富岡八幡宮は「深川の八幡様」と親しまれる江戸最大の八幡宮で、「神輿深川、山車神田」とい
われたように、神輿振りが見どころです。神輿の数は120基を超え、中でも大神輿ばかり54基が勢
揃いして練り歩く「連合渡御」は圧巻。沿道の観衆から担ぎ手に清めの水が掛けられ「水掛け祭り」と
しても知られています。観衆も担ぎ手も一体となって盛り上がる熱い祭りです。
深川神輿の掛け声は「ワッショイ、ワッショイ」で、語源には「和し背負へ」など諸説あります。担ぎ方
は神輿をあまりゆすらず、「もみ」と「さし」で神輿を一度膝まで下げてから勢いよく上に差し上げる特
徴があります。
※三社祭
浅草神社(東京都台東区浅草)の祭で、今年は5月13~15日の3日間行われます。浅草神社は、
浅草寺をつくった土師真中知命(はじのまつちのみこと)と聖観世音菩薩を川から引き揚げた漁師の
檜前浜成(ひのくまのはまなり)・竹成(たけなり)兄弟をまつる神社で、明治維新の神仏分離令によ
って浅草寺と分かれ、明治元年に三社明神社と改められ、同6年に浅草神社となりました。
三社祭の1日目は、浅草神社で五穀豊穣を祈願して無形文化財「びんざさら舞」を奉納します。び
んざさらとは、竹や木の薄い板を何枚も重ねて紐で綴った楽器で、アコーディオンのように開いたり
閉じたりすると、サラーサラーという音がします。
2日目は氏子44町会から約100基の神輿が出て、浅草神社でお祓いを受けた後、大人神輿も子供
神輿も威勢よく「セイヤ、セイヤ」の掛け声とともに各町内を渡御します。
最終日は宮出しで3基の大きな宮神輿が氏子たちに担がれて発進し、浅草の町は熱気に包まれます
。三社祭の神輿は「喧嘩神輿」といわれるほど激しく神輿を上下左右に動かしますが、これを「魂振り
(たまふり)」と言います。わざと荒々しく揺さぶることで、神輿に坐す神様の霊威を高め、豊作・豊漁や
、疫病が蔓延しないことを祈願するそうです。
この他にも千貫神輿が練り歩く鳥越神社の「鳥越祭」(6月開催)、下谷神社の「下谷祭」(55月開催、
本祭は2年に1度)、根津神社の「根津権現祭」(9月開催、神幸祭は2年に1度)など、江戸の町に古
くから伝わり人々が大切にしてきた夏祭りがたくさんあります。 |