初午
「初午」は2月の最初の午の日。この日は稲荷神のお祭りで、全国各地の稲荷神社で豊作、商売繁盛、開運、家
内安全を祈願します。稲荷神のお使いといわれるキツネの好物の油揚げや、初午団子を供える風習もあります。
初午の由来
稲荷神社は全国に約4万社。農業、漁業、商売、家庭円満にご利益があるとされ、京都市伏見区の伏見稲荷大
社が総本社です。伏見稲荷によると、和銅4年(711年)の2月の最初の午の日に、祭神が稲荷山(伊奈利山)の三
箇峰に降りたという故事から、稲荷神を祭る祭事が行われるようになったとされます。旧暦2月の初午の日は今の
3月にあたり、ちょうど稲作を始める時期だったため、農耕の神様を祭るようになりました。稲荷の名は「稲生り」か
ら来たともいわれています。また、その日から習い事を始めるという風習もありました。
初午は伏見稲荷をはじめ大阪の玉造稲荷、愛知県の豊川稲荷など、各地の稲荷神社で盛大に祭がとり行われ
ます。ご近所のお稲荷さんにも赤いのぼりが立ち、賑やかになるでしょう。初午の日には、赤飯や油揚げ、団子な
どを供えて祭ります。
初午のお供え物
いなり寿司
稲荷神社といえばきつねがつきもの。きつねは稲荷神のお使い役で油揚げが大好物。初午の日には、油揚げや
油揚げにすし飯を詰めたものを奉納しました。これが、いなり寿司の始まりで、きつねの大好物の油揚げを人間も
たくさん食べられるよう考案されました。稲荷神社もいなり寿司も親しみを込めて「おいなりさん」と呼ばれています。
いなり寿司は、東日本では米俵に見立てた俵型ですが、西日本ではきつねの耳に見立てた三角が主流です。
いなり寿司イメージ
■しもつかれ
また、初午の行事食として有名なのが、栃木県を中心に北関東に伝わる「しもつかれ」です。鮭の頭と、鬼おろし
ですった大根やにんじん、油揚げ、大豆、酒粕と煮る煮つけで、おせち料理や節分の豆の残りなどをうまく使った
栄養満点の郷土料理です。
■初午団子
初午には蚕の神様を祀る行事も行われました。養蚕をしている家では、繭がたくさんできるようにと願い、餅粉で
繭の形に作った団子をお供えしました。地域によっては、団子を繭玉に見立てて中に小豆を一粒入れたり、ざるの
中にマブシ(わらのようなもの)を入れて蚕が繭を作るように飾ったり、繭がシミにならないよう醤油をつけずに食べ
たりします。また、初午団子をたくさん振る舞うと、繭から毛羽をとる「繭かき」の作業が賑やかになってよいといわ
れ、近所の家に配る風習もありました。本来、節分とは季節の節目である「立春、立夏、立秋、立冬の前日」のこと
をいい、年に4回あります。ところが、旧暦では春から新しい年が始まったため、立春の前日の節分(2月3日頃)
は、大晦日に相当する大事な日でした。そこで、立春の前日の節分が重要視され、節分といえばこの日をさすよう
になったのです。昔は、季節の分かれ目、特に年の分かれ目には邪気が入りやすいと考えられており、さまざまな
邪気祓い行事が行われてきました。おなじみの豆まきも、新年を迎えるための邪気祓い行事です。
豆まきの由来
古代中国では、大晦日に「追儺(ついな)」という邪気祓いの行事がありました。これは、桃の木で作った弓矢を
射って、鬼を追い払う行事です。これが奈良時代に日本に伝わり、平安時代に宮中行事として取り入れられました
その行事のひとつ「豆打ち」の名残が「豆まき」で、江戸時代に庶民の間に広がりました。豆を"打つ"から"まく"に
変わったのは、農民の豊作を願う気持ちを反映し、畑に豆をまくしぐさを表しているからだといわれています。
本来は大晦日の行事でしたが、旧暦では新年が春から始まるため、立春前日の節分に行われるようになり、節分
の邪気祓い行事として定着していきました。
■豆まき
鬼は邪気や厄の象徴とされ、形の見えない災害、病、飢饉など、人間の想像力を越えた恐ろしい出来事は鬼の
仕業と考えられてきました。鬼を追い払う豆は、五穀の中でも穀霊が宿るといわれる大豆です。豆が「魔滅」、豆を
煎ることで「魔の目を射る」ことに通じるため、煎った大豆を使い、これを「福豆」といいます。では、どのようにまい
たら良いのでしょうか。
■豆まきの仕方
※豆は必ず炒り豆で、豆には穀物の霊力が宿っているとされています。また、芽が出る寸前の春の豆は生命力
の象徴で縁起が良いとされていますが、拾い忘れた豆から芽が出ると良くないことが起こるといわれています。豆
は必ず火を通してからまきましょう。スーパーで売っている節分用の炒り豆でOKです。
※神棚に祭って鬼退治のパワーアップ、炒った豆を枡に入れ、神棚にお供えします。神棚がない場合は南の方
角に置きます。夜になってから、戸口や窓、ベランダなどで豆まき開始です。
※大きな声で「鬼は外!福は内!」、豆をまくのは、家長の役目とされ、その年の干支の年男、年女も吉とされて
います。家中の戸を開け放して「鬼は外!福は内!」と大きな声で唱えながら家の外と内に豆をまきます。豆をま
いたら、鬼が入ってこないようすぐに戸を閉めます。そのあと1年間無病息災で過ごせるよう、年の数だけ福豆を
食べる風習があります。食べる豆の数は、新しい年の厄祓いなので満年齢よりも1つ多く食べる、いわゆる 数え
年として1つ多く食べる、もともとが数え年と考え新年の分を加えて2つ多く食べる、満年齢のまま食べるなど、地
方によって様々ですが、全部食べきれないという方は、梅干し、塩昆布、豆3粒を入れた「福茶」を飲む方法もあり
ます。
■豆まきのおもしろバリエーション
【北海道~東北、信越地方】雪の中でも見つけやすいように、豆の代わりに殻付き落花生をまく。
【九州】「鬼は外」ではなく「鬼はほか」という。
【岡山、佐渡など】 豆占いをする。豆を炉の灰の上に12粒並べ、右から1月2月・・・12月として、白くなった月は晴
れ、黒く焦げたら雨、豆が転がって落ちたら風が強く吹くといわれる。
【東京・入谷の鬼子母神】「鬼は外」の代わりに「悪魔外」という。
その他にも、鬼が悪者を退治するなどの言い伝えがある地域や社寺では「鬼は外」とはいわず、「鬼は内」などと
いうところもあります。「九鬼さん」「鬼頭さん」など、苗字に鬼がつく家でも同様に「鬼は内」などといって、鬼を中に
呼びこむのだそうです。
恵方巻
恵方巻は、その年の恵方を向いて丸かじりすると願い事が叶い、無病息災や商売繁盛をもたらすとされる縁起
のよい太巻きです。
大阪発祥の風習ですが、関西地方で親しまれ、現在は全国的な広がりをみせています。
恵方巻には、縁起よく七福神にちなんで7種類の具を入れ、巻き込んだ福を逃さぬよう丸ごと1本、恵方を向いて
無言で食べきるとよいとされています。 |
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